マイペースなN一家

口調こそ穏やかだったが、N・Hは諦めたようにうんざりしている。個人情報が慎重に保護されるべき時代に無闇な暴露は御法度だ。そんな、私も薄々思っていたことをN・Hは体を張って代弁してくれる心強い存在だった。
「いつものことだから、あまり気にしないで」
 N・K夫人は私とM・Tの肩にそっと手を差し伸べると「あくまでも大人同士の話だから」と気持ちを落ち着かせてくれた。初めて目の当たりにする、人様の家庭の親子喧嘩の生々しさと、その影に怯えるように俯きっぱなしの二人。M・Tはまるで生気が失せたように箸を止めていたが、夫人の粋な計らいのお蔭でまた少しづつ蕎麦を啄み始めた。
 私は目の前で起きたことに圧倒されている間中ずっと自分が何を食べているのかさえ分からなかったが、我に返ったことにほっと胸を撫で下ろす。既にこの場所に話題の渦中の人物であるT・Mが居なかったことだけが不幸中の幸いだったと思う一方で、一連の騒動に本人が周辺で聞き耳を立てて居やしないかと思うと私は冷や汗が出てくる。人間とは罪深い生き物だ。
 M・Tは何とか食欲を取り戻していた。蕎麦を平らげるまでは思いの外、そんなに時間は掛からなかったが、その間にみんな食べ終わってしまい、最後まで残ってしまったM・Tを一人にさせるのは心許ないと思った私はその場に留まりM・Tの話し相手になってやることにした。とにかく道場の人間は信じられないほどマイペースなのだ。私にはN・Mの口から飛び出した言葉の中で良く分からなかった固有名詞がひとつだけあった。丁度いい機会なので私は頭脳明晰なM・Tに聞いてみることにした。
モ デ ル 愛用 まとめ 酵素ダイエット